![]() |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 11. DC サーボ付き反転増幅ゲイン可変Chu Moy Amp | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
11.1 Chu Moy Ampのオフセットを解消する 前回の話ですが,ゲイン可変反転動作のChu Moy Ampを製作しオフセットやノイズがどうなるか調べてみたところ,オペアンプと回路定数の設定によっては,出力にオフセットが大きく現れることが分かりました.出力電位がオフセットすると,ヘッドフォンの音を出す振動体の基準位置が本来の位置からずれます.この結果,振動体にかかる力がアンバランスになりますから,音質が影響を受けることになります.したがってオペアンプ本来の性能を発揮させたいならば出力オフセットはできるかぎりゼロに近づける必要があます. Single Typeのオペアンプであればオフセット調整するためのNull Setting端子を持っていますが,Dual Typeのオペアンプであれば,非反転入力の接地抵抗を調整して行います.いずれにせよ厄介な作業です.オペアンプの種類によって,同種のものでも個々の特性によって,時にはチャンネルによっても最適値はかなり異なりますし,抵抗値が数十〜数百オームずれても,出力オフセットはmV単位で動いてしまいます.さらにオペアンプのオフセット電圧は温度によっても変化するので,使用しているうちに出力オフセットは当初設定からずれてしまいます.
これらのことを考えると,この分野におけるバーブラウンのOPAシリーズの優位性が理解できます.下表によく使われるオペアンプの諸特性を示します.OPA2604とLF353はJFET入力,他はバイポーラ入力です.OPAシリーズのオペアンプはローノイズ・ハイスルーレイトで知られていますが,JFET入力であるため入力オフセット電流,バイアス電流がきわめて少ない上に,JFET入力では大きくなりがちな入力オフセット電圧も低く抑えられています.この結果,少々乱暴な回路定数を設定しても,出力オフセットがきわめて小さく保たれ「オペアンプ本来の音」が実現できます.
別の言い方をすれば出力オフセットを高いレベルで,簡単に調整できれば,さまざまなオペアンプを容易に聴き比べることのできるアンプにすることができます.そんな都合のいい方法が,実はあります.それはDCサーボです.DCサーボはオーディオアンプにはけっこう使われています.あのSATRIアンプでさえ出力オフセットをゼロに近づけるために使っています. DCサーボという言葉だけを聞くと,たいそうなもののような気がしますが,実際はオペアンプの反転動作回路の帰還抵抗が「抵抗」ではなくコンデンサになっただけのもので,積分回路とも呼ばれます.技術的解説は「なひたふ新聞」さんに詳しく書いてあります. 早い話,Chu Moy Ampにオペアンプ回路をもう一つ追加すれば,調整作業をほとんどせずにオフセットを解消できるアンプを作ることができそうです. |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 11.2
シミュレーションによる回路設計
まず前にやった反転動作Chu Moy Ampです.オペアンプにNJM4558を挿入し,増幅率4.7倍に回路定数を設定してます.ヘッドフォンはHD580を想定し300Ωです.NJM4558のspice modelは新日本無線のサイトからダウンロードした純正品(?)です.
入力を0.1V,1kHzでのシミュレーション結果をみると,出力波形はきれいですし,周波数特性も良好で100kHzあたりまで増幅率は平坦です.増幅にともなうひずみを見るため,出力波のフーリエ解析も行いましたが,この条件なら全高調波ひずみ(THD;Total Harmonic Distortion) は17.74u%です.この条件で,入力をショートさせ,出力のオフセット電位をみると,-34mVでした. この反転動作Chu Moy AmpにDCサーボ回路を付加します.サーボアンプには入力オフセット電流,バイアス電流が少ないJFET入力のオペアンプを用います.ここではLF353を入れています.
メインのオペアンプをNJM4558のままに,先ほどと同じ条件でシミュレーションすると,出力波形,周波数特性に変化はありません.THDが518.4u%と一桁増えますが,まだ十分すぎるほど小さな値です.他方,入力ショート時のオフセットは1.55uVまで減少します. 同じ条件でオペアンプをNJM4580D,NE5532P,NJM2114Dにしてシミュレーションした場合の一覧は下記のとおりです.
DCサーボ回路はオペアンプで発生するオフセットを解消するだけでなく,音源のオーディオ信号に直流が乗っている場合に,これをキャンセルする効果もあります.したがってDCサーボ回路を付加すれば,入力と出力のいずれのカップリングコンデンサも不要になります.
音質へのDCサーボ回路の影響ですが,理屈の上ではっきりしているのは,DCサーボを使うとオーディオ信号に関しては,あたかも結合コンデンサを使ったかのように,低周波部をカットするハイパスフィルタのような効果があることです.サーボアンプに帰還抵抗の代わって入れるコンデンサ容量とメインアンプの出力段からサーボアンプの反転入力につなぐラインに入れる抵抗の積が,低音のカットオフ周波数を決定するので,そこそこに大きな値にする必要があります.あとはスルーレイトが大きくノイズが少ないほうがいいとも言われていますが,上述のシミュレーションでLF353をOPA2604に代えても,電源に少々細工をしても,THDはほとんど変わりませんでした.ということで,メインの回路はこれで行くことにします. 次は電源です.両電源が必要ですが,手元にある12VスイッチングACアダプターを使うイージーな方法でいくことにします.ただスイッチング電源だとコモンモードノイズに高周波のリップルとスパイクが悪さをするとの話があるので,アダプターからの入力をまずはコモンモードラインフィルターを介して受け入れ,抵抗と電解コンデンサで構成するローパスフィターを通してから抵抗で仮想接地を取り,オペアンプに供給することにします.シミュレーターで効果を見積もると次のようになりました.
左上の回路図がオーソドックスなコンデンサと抵抗とによる分圧回路,右上がラインフィルターと抵抗とを入れる回路です.電源はスイッチング電源を想定し,12Vの直流に±1V10kHzのリップルが乗っているという仮定です.Tansient Analysisを見れば分かるとおり,オーソドックスな回路ではリップルがそのまま入ってきますが,ラインフィルターと抵抗とを入れると,大幅に改善されます.AC Analysisを見れば分かるとおり,周波数の高い成分ほど大きく減衰させることができます.ただ,電源に直列にインダクタや抵抗を入れるので,電源のインピーダンスがやや大きくなるというデメリットがあります. 電源まで含めての回路図は次のようなものです.LEDを電源ON表示に入れます.操作部はボリュームだけです.ボリュームは音量を絞ったときのノイズで有利なようにゲイン可変です.DCサーボ回路があるので,帰還抵抗の変化によるオフセット変動は問題になりません.音源側でボリュームコントロールをすれば,ボリュームもなくても済みます.
今回は「オペアンプの音を聴く」というコンセプトなので,あえて出力バッファはつけずに,オペアンプ出力を直接ヘッドフォンで聴く設計にしています.バッファ付きのアンプに比べると当然非力ですが,シミュレーションでみる限り,少々制約のあるオペアンプを使ってもインピーダンス300Ωのヘッドフォンにクリッピングせずに1.4V以上出力できます.ということはヘッドフォンの音圧感度が97dBなら,113dBに達する出力ですから,ほどほどの音量は得ることができるはずです. とりあえずシミュレーションに基づき設計しましたが,あくまでシミュレーションです.私が以前に行ったゲイン可変反転増幅Chu Moyの実験では,NJM4558を用いた場合のオフセットはシミュレーションより一桁小さく,NJM2114を用いた場合は一桁大きくなりました.実際にものを作った場合,オペアンプの特性のばらつき次第では,シミュレーション結果からかなりずれることも覚悟しておく必要はあります. |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
11.3 部品選定と製作
抵抗には音質向上の効果のほどは疑問ですが,金属被膜抵抗を使うことにします.といっても平滑用のコンデンサは秋月の廉価品です.コモンモードラインフィルターはジャンクとして150円くらいで買ったもので素性がわかりません.部品表を作るにあたって,メインのオペアンプはNJM4558Dとし,サーボのオペアンプはLF353としました.コストはおおよそ1000円です.
LEDの制限抵抗は,はじめは10kΩにしていましたが,ちょっと暗すぎたので手持ちの3kΩに取り替えました.というわけで,1個だけ炭素被膜抵抗を使いました. 部品の配置は前に製作したゲイン可変反転Chu Moy Ampにもう一組アンプを組み付け,電源にコモンモードラインフィルターを入れただけです.アースは基板中央に薄い銅板を貼り付けて形成します.
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
11.4 出力オフセット電圧を測る
まず,確認したいことは前回のゲイン可変反転Chu Moyと同様に出力のオフセット電圧です.DCサーボの目的はなんといってもこれです.DCサーボがどの程度効いているかは,サーボ用のオペアンプを抜き差しすると確認できます. 測定はこの前と同様に入力をショートしヘッドフォンの代わりに47Ωの抵抗をつなぎました.帰還抵抗は最大音量になる100kΩから絞り込んでいき,47Ω抵抗の両端に生じる電位差をテスターで測定しました.NJM4558,NJM4580,NE5332,NJM2114と測ってみました.
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
11.5
DC サーボ付きChu Moy Ampで聴く じつを言うと,先に示した回路図はノイズ対策を施したもので,その前に,ノイズを確認するために,入力をショートさせたまま,ヘッドフォンにMX400をつないだところ,ひどいノイズが聞こえました. いくつか対策をしました.ひとつめは,サーボ用オペアンプの反転入力を0.1uFのセラコンを介して接地させました.サーボ用オペアンプの出力からメインのオペアンプの非反転入力への配線は,はじめは普通のスズめっき銅線でしたが,これをシールド線に換えました.さらにオーディオ信号入力を0.022uFのセラコンを介して接地しました.あとはジャックやボリュームへの配線長さを切り詰めました.もう少し手があるかもしれません. シミュレーターは回路として成立するか否か,うまく作れば最高でどの程度の性能になるかを知るのには適していますが,ノイズだ発振だといったトラブルの予見や対策にはそんなに役に立ちません.この辺は試行錯誤でやるしかないでしょう. これらの対策を施した上で,オペアンプをNJM4558,NJM4580,NE5332,NJM2114と乗せ換えてノイズを確認しました.今回の回路では帰還抵抗がボリュームであり,その最大値は100kΩでゲインは10倍というかなり大きめの設定にしています.いずれのオペアンプでも最大値に近いあたりまでボリュームを上げるとノイズがのってきました.NJM4558はとくに,きつめに出ていました.しかしながら,ちょっとばかりボリュームを下げると,ほとんど聞こえなくなります. 次は曲を聴いてみます.音源にはMP3をセットし,LAMEで128kbpsに圧縮した中島美嘉の「雪の華」を聴いてみます.普通に聴けます.少なくとも,ヘンな音やノイズはまったく聴こえませんでした. |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||